【物語9】人目を気にして会社を退職。気持ちはラクになったが、生活費が苦しくなる

薄毛物語

抜け毛への恐怖、人の目を気にする生活。

なにもかもが嫌になり、追い詰められた私は、会社を辞めてしまったのだ。

このとき私は30歳だった。

【物語9】人目を気にして会社を退職。気持ちはラクになったが、生活費が苦しくなる

30歳で会社を退職、でも気持ちはラクに

20歳から30歳まで、10年間勤めた会社を辞めた

でも後悔はなかった。

むしろ会社を辞めてからは、気がラクになった。

 

もちろん生活費での不安はある。

一人暮らしをしているから、月々の家賃や光熱費、食費代やスマホ代など、普通に生活しているだけで出費はある。

 

けれどそれ以上に、人の目から解放された感じがたまらなく嬉しかった

 

 

「もうだれも目も気にしなくていい」

 

 

そう思うと、心が休まった。

本当に本当に、気持ちがホッとした。

 

 

 

退職してからしばらくは、今までの貯金と退職金で暮らした。

数か月すれば、今度は失業保険が手に入る。

 

人の目を気にしない生活に喜びを感じ、私は無職生活を続けた。

世間的に見れば、私はニートや引きこもりと言われるだろう。

でもそんなことは気にしなかった。

 

それよりも人に私の薄毛を見られることの方が苦痛だった。

 

 

 

無職の期間、ほとんど家から出なかった。

朝起きて、なにをするわけでもなくボーっとする毎日。

 

気晴らしにと近所を歩く(ウォーキング)ことはあったが、そのときは必ず帽子をかぶる。

できるだけ人通りの少ない道を選んで、自分ひとりだけの世界に閉じこもった。

 

 

 

無職の生活は本当に楽しかった。

会社で働いていたとき、あんなにも孤独を感じていたのに、今はひとりの生活が楽しくてたまらない。

 

私はこの生活をずっと続けたいとさえ思った。

 

無職で生活が苦しくなる

しかし、いつまでもこの生活を続けるわけにはいかなかった。

さすがに生活費が苦しくなってきた。

 

「また働くのか、、」

そう思うと、会社勤めしてた頃の苦痛がよみがえる。

また人目を気にする生活に戻ると思うと、気持ちは沈むばかり。

 

 

ちなみに無職の間は育毛セットはもうやめていた。

正確には、会社を退職する前にはやめていたのだ。

「どうせもう退職するんだし、もういいか」半ば開き直って育毛セットを使うのをやめてしまったのだ。

 

 

でもまた社会に出るとなると、そうもいかない。

育毛セットをやめてだいぶ経ったので、もとの悲惨な状態(地肌が見える)に戻ってしまった。

 

 

「もう人目につきたくない、人と接することなく働ける場所なんてあるかな、、」

 

すると、ふと自分が勤めていた会社の製造部門を思い出した。

 

私は自動車工場で働いていた。その工場では、自動車の部品を作っている。

私は事務職だったので工場現場に行くことはほぼなかった。

 

けれど思い出したことがあった。

工場内で部品を作っている人たちは、全員帽子をかぶっていたのだ

 

作業服を着て(とはいっても工場支給のベストやジャンバー着用だけど)、必ず帽子をかぶることが義務付けられている。

 

そうそう、ベルトコンベア担当、つまり“流れ作業”で働く女性従業員の人たちも、全員帽子をかぶっていた。(義務だから当然だけど)

 

 

ということは、工場内の現場で働けば、帽子をかぶって仕事ができる・・!

 

 

そう思った私は、早速に工場(流れ作業)の仕事を探し始めた。

手っ取り早いという思いから、派遣会社に登録した。

 

するとすぐに仕事が見つかり、面接に合格し、あっさり新しい職場が決まったのだ。

 

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再び働き始める

新しい職場(派遣先)は、重機工場だった。

その中で私の担当は、部品の検査をすることだった。

 

ひとつのライン(ベルトコンベア)に女性が15人くらいいて、流れてきた部品を検査や組み立てをし、また次の人に流す、という流れ作業だった。

 

もちろん全員が違う作業をする。

自分のところで止まったらどうしよう、と最初は思ったが、そんなに難しくない、いやむしろ単純作業だったので、滞りなく次の人へ部品を流すことができた。

 

 

 

作業中、隣の人との会話は全くない。(年齢層も、30~50代の主婦の方々がほとんどだった)各自が自分の持ち場を担当して、黙々と作業をする。これには本当に助かった。

 

人と話すのが嫌ではないが、万が一髪の毛の話題になったら、、と思うと、話をすることに緊張感が生まれる。

でもここでは世間話さえもほとんどないので、私にとっては有難い環境だった。

 

 

そしてもくろみ通り、帽子をかぶっての作業だ

朝出勤して、会社支給のジャンパーと着て、帽子をかぶる。

 

作業中は帽子をかぶることを義務付けられているが、食堂でお昼を食べるときは、帽子は脱いでもいいことになっている。

でも周りをも渡すと、半分くらいの人が帽子をかぶったまま、お昼を食べていた。

この光景を見てホッとした。

 

 

もしお昼休みには帽子を外せと言われたら、ただでさえペチャンコの髪が、帽子のせいで悲惨な状態になっていることには間違いない。

そんな状態の髪なんて、絶対見せられない。

 

そう思っていたが、幸いにも帽子をかぶったままでOKだったので、胸を撫で下ろした。

 

 

朝から帰宅時間まで、帽子はかぶったまま人と会話することもなく(お昼はひとりで食べていた)、私にとっては最高の環境だった。

 

職場の同僚Sちゃんの登場

働き始めて半年が過ぎたころ、私のライン(ベルトコンベア)に、新しい女性が入ってきた。

彼女も派遣社員で、年齢も私と近かった。

 

少しぽっちゃり、、、いや、だいぶぽっちゃりした彼女だったが、年齢も近いということもあり、自然と話をするようになった。

 

 

彼女(Sちゃん)は、私より2つ年下だった。

Sちゃんはいつもモジモジして、下をうつむいている。

かなりぽっちゃりした体型で、お世辞にもかわいいとは言えない。

 

体型を気にしてか、自信なさげに下をむいていはモジモジ。

会話をするときも私の目を見ることはなく、目をそらして話をする。

緊張しているのか、いつも手の指を動かしている。

 

けれど、時おり顔を上げて笑う顔は、とてもかわいかった。

 

 

そんなSちゃんを見て、なんとかしてあげたいなと思った。

でもなにもできなかった。

 

なぜなら、Sちゃんの気持ちが痛いほどわかるからだ

 

 

私も薄毛にコンプレックスがあって、人の目を気にしている。

職場では帽子をかぶっているから薄毛はバレてないものの、いつどこでバレるかわからない。

心の中ではいつもヒヤヒヤな緊張感を持ち、できるだけ人との接触を避けていたのだ。

 

 

だからなんとなく、Sちゃんの自信のなさがわかる。

Sちゃんもきっと、自分のカラダにコンプレックスがあるのだろう。

そのせいで人目を気にして、心を閉ざしているのかもしれない。

 

そう思うと、無理やり心を開かせることはできなかった。

 

 

私にできることは、なにもぜずに、Sちゃんの気持ちに気づかないフリをして、側にいることだった。

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